顎骨壊死の説明 ~どうしてリウマチ科で説明するのか
ネットの時代になり、医療関係者以外の人も色々な説明を手に入れる事が容易になる時代となりました。一方、妄想、思い込み、知識不足が相まって、拾い記事に一喜一憂する人、妄想・思い込みで文句を言う人、病院に通院しなくなる人が、はっきりいって高齢者で増えました。
私も医師ですが、自分の専門領域外の病気に罹患した事があります。国対本、専門書、ネット記事を理解していても、実際に主治医に質問をすると全然違う回答が返ってくるという経験は何度もあります。法律関係の方や不動産関係、建築関係者の方とお話をしても、ネット記事とは全然異なる解答を貰うなんてことはいつもの事です。それが当たり前だと思っております。ネット記事より専門家の発言の方が正しいのです。当たり前です。
ネットで何でも100%の回答が出て来れるならだれも苦労しません。そして、専門家がネットで検索をするのと、そうでない人が検索するのとでは、ネットも解答が変わる事も、自分自身が身をもって経験しています。
だから、ネット記事に振り回されず、ちゃんと説明を聞いて欲しいのです。
最近あったエピソードを説明します。顎壊死ですね。とあるおばあちゃんは顎骨壊死になるのがどうしても嫌だから、プラリアという製剤をどうしても打ちたくない、と大騒ぎをします。でも、かなり破骨細胞活性が高いので、プラリアの力を借りたいのですが、丁寧に丁寧に説明しましたが、理解しましたと承諾してはワー!!!もう一度説明して納得してもその後ワー!!!を繰り返します。思い込みって本当に怖いですね。
ここで、2005年頃から始まるBP製剤など破骨細胞の活性を低下させる製剤と顎骨壊死を巡る話を記事にさせて下さい。当時研修先でBP製剤と顎骨壊死の関連の症例報告が増えていて、歯科学会で話題のトピックスになっていると医局で小耳に入れました。あれから20年以上経過し、当院に程近くにある人気の歯科医・W歯科医院の院長にも詳しく説明を受けました。W先生の話と、ネット記事、論文の内容を総合して説明すれば、まだ結論が出ていない話題であり、顎骨壊死の頻度自体は恐ろしく低く(1人/数千人~1万人)、原因としては、口腔衛生状態が悪い、勿論BP製剤やプラリアの長期使用、そして高齢である事、その他併用薬剤(ステロイドの事ですね)、糖尿病がある事などが挙げられます。つまり、これらの原因を総合して、数千人から1万人に1人の発症の訳ですから、どれだけBP製剤やプラリアによる発症頻度が低いのか!!!
しかも、まだ発症メカニズムが不明・・・、これを文句を言ってはいけない訳で、未だに大腿骨頭壊死を日常的に診断し順天堂に紹介している私でさえ、難病書類のタイトルが『特発性脱退骨頭壊死症』である事やその事情は良く知っております。『特発性』とは、原因がまだ解明されていないという意味です。つまり、骨疾患のメカニズム解明は本当に難しい訳です。統計的にはステロイドが悪さする事は多くの医師が知っている所なのですが、でも大腿骨頭壊死症でさえ『特発性』。まして、2005年頃から騒がれている顎骨壊死症のメカニズムなど、解明される訳が無いのです。まだまだ新参者扱いです。
で、もう一度戻りましょう、頻度の問題、ステロイドも骨粗鬆症の治療薬も使いこなしている院長のリアルな体験談です。
顎骨壊死・・・自分で診断した人は20数年間の医師人生でただ1人だけ、しかもリウマチだったが、PB製剤、ステロイド、プラリアも未使用。ただ口腔環境が本当に悪い人でした。既往歴でお目にした人がもう1人いた、それだけ。人生でたった2名であり、そちらも軽症でオペを受ける事もなく経過しております。
大腿骨頭壊死症・・・0から1人/年の頻度で診断しています。ステロイドの使用歴(短期使用者も大勢います)、自分がステロイドを投薬している人、他施設で投薬されていた人、過去に投薬されていた人、アルコールを沢山飲んでいる人、喫煙関連、さまざまな人を診断しております。2人以外全員オペを受けました。
顎骨壊死の頻度は実臨床でそれくらい少ないのです。なので、あまり心配せず治療を受けてください。もし、不安がある方がいれば、投薬前、投薬中に歯科で検診を受ける事をお勧めします。
院長でした
2026年5月15日
